家族と人生後半

相続税の債務控除はどこまで?50代の私が「払った請求書は全部引ける」と決めない理由

2026年10月12日

借入金の残高証明、医療費請求書、税金の通知書を確認する机上

親が亡くなった後、住宅ローンの残高証明、病院の請求書、税金の納付書が次々に出てくると、「自分が払った分は相続税から全部引けるのかな」と迷いますよね。領収書があれば大丈夫、と早く決めたくなるかもしれません。

私も不安になると情報を集めすぎるところがあり、請求書が増えるほど、控除できる物とできない物を一気に分類したくなります。でも債務控除は、支払日より先に、死亡時に故人の債務が存在したか、確実か、誰が負担するかを見る制度です。

そこで今回は、2026年8月14日に国税庁の案内、債務控除の通達、令和8年分の申告書様式を確認しました。借入金、未払医療費・税金、団信、保証債務、墓石の未払代金を、家族で追える順番にしていきましょう。

最初にするのは、支払済みの領収書だけを集めることではありません。死亡日現在の債務、債務者、残高、負担者、根拠資料を一行ずつ並べることです。

債務控除は税額から直接引く制度ではない

相続税の債務控除は、故人が残した一定の借入金や未払金などを、相続した財産の価額から差し引く仕組みです。たとえば100万円の債務があっても、計算済みの相続税額から100万円をそのまま引くわけではありません。

財産の価額から債務と葬式費用を差し引いた純資産価額を土台にし、基礎控除や法定相続分などを通じて相続税額を計算します。債務の金額と税金が減る金額は同じではありません。

「控除」と聞くと、税額から直接引けるように感じますよね。私も住宅ローン控除や税額控除の言葉に慣れていると、同じ仕組みだと思いそうです。家族の一覧では「財産から引く債務」と「計算後の税額」を別欄にします。

言葉相続税計算での位置
プラスの財産預金、不動産、証券などを評価する
債務控除一定の債務を財産価額から差し引く
葬式費用債務ではないが一定範囲を差し引く
税額控除計算後の相続税額から差し引くものがある
債務控除と税額控除を同じ意味で使わないようにします。

故人の債務100万円があっても、相続税額から100万円を直接差し引けるわけではありません。

死亡時に存在する故人の確実な債務かを先に見る

国税庁は、遺産総額から差し引ける債務を「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務で、確実と認められるもの」としています。見る軸は、死亡日、債務者、金額や支払い義務の確実性です。

死亡後に相続人が自分の判断で注文した片づけ費用、法要費用、家の修理費などは、相続後に生じた相続人自身の支出です。故人の財産を守るための支出であっても、それだけで故人の債務になるわけではありません。

家のために払った費用なら、故人の債務に見えますよね。私も「相続がなければ発生しなかった」と考え、同じ袋へ入れたくなります。でも、請求書の契約日、サービスを受けた日、契約者、死亡日残高を見れば、誰の債務かを分けやすくなります。

  • 契約者・債務者は故人か
  • 死亡日現在に支払義務があったか
  • 残高や金額を確かめられるか
  • 相続後に相続人が新しく契約した費用ではないか
  • 最終的に誰が負担するか

死亡後に相続人が支払ったという事実だけで、すべてを故人の債務として差し引かないでください。

借金が多く、相続放棄を迷っている方は、控除計算より先に財産を動かさない方が安心です。相続放棄の3か月と初動を確認する記事で、期限と避けたい行動を先に見てください。

領収書があると確実な債務に見え、領収書がないと対象外に見えてしまいますよね。私も紙が一枚あるだけで判断を終えたくなります。でも領収書は支払った事実の資料であり、死亡時に故人が負っていた債務かどうかは、契約書や請求明細、利用日、死亡日残高と合わせて見ます。反対に、まだ払っていない債務でも資料から内容と金額が確かめられることがあります。「払った・未払い」の二択で分けず、債務が生じた日と支払った日を別々に記録しましょう。

借入金・未払医療費・未払税金は資料を分ける

借入金・医療費・税金・保証を四つの素材で分けた立体イラスト
債務は種類ごとに、死亡時の残高と確実性を分けて見ます。

銀行や消費者金融などの借入金は、死亡日現在の残高証明書、契約書、返済予定表で確認します。毎月の返済額や通帳の最終引落額ではなく、死亡日時点で故人が負っていた残高を土台にします。

入院費、治療費、介護サービス費など、死亡前に故人が受けたサービスの未払額も候補です。請求書、診療明細、支払日、立替えた人を残します。医療費控除の対象になるかという所得税の話と、相続税の債務控除は別に整理します。

病院や税金の通知は、亡くなった後に届くことがありますよね。私も到着日が死亡後だと、相続後にできた債務のように見えて迷います。通知日ではなく、何に対する請求か、誰の所得や財産に課された税金かへ戻って見ます。

債務候補主な資料確認する日
金融機関の借入金残高証明、契約書、返済表死亡日現在
未払医療費等請求書、診療明細、領収書サービスを受けた日
所得税等準確定申告、納付書、計算資料誰の所得に対する税か
固定資産税等課税明細、納付書課税対象と負担関係
書類が死亡後に届いた場合も、債務の原因と死亡日を分けて確認します。

故人の所得税などは、死亡時にまだ税額が確定していなくても、死亡後に相続人が納付するものが対象になり得ます。一方、相続人側の責任で生じた延滞税や加算税などは控除できません。納付書を一枚にまとめず、本税と附帯税を分けます。

病院から家族あてにまとめた請求が届くと、故人分と付き添った家族分の境が分かりにくいこともありますよね。私なら受付へ、患者名、診療日、入院期間、未払額が分かる明細をお願いし、支払った家族の名前は別欄へ書きます。介護施設なら、死亡前の利用料、居室の原状回復、死亡後の荷物保管など、請求の中身を分けてもらいます。同じ一枚の請求書でも、すべてが同じ税務上の扱いになるとは限らないためです。

団信で返済される住宅ローンは残高だけで控除しない

住宅ローンに団体信用生命保険が付いており、死亡により保険金でローン残高が返済される場合、相続人がその借入金を負担しないことがあります。ローン残高証明書があるからといって、その全額を債務控除へ入れるわけではありません。

金融機関へは、死亡日残高に加えて、団信の加入状況、保険金で返済される金額、相続人が実際に負担する残額、抵当権抹消の手続きを確認します。保険会社と金融機関の処理が終わる前に、残高を確定額として扱わない方が安全です。

大きなローン残高を見ると、相続財産から引けると思って少し安心しますよね。私も住宅ローンが残っていると、家の評価額と相殺したくなります。でも、団信で消える債務まで引けば、家族が実際に負担する金額とずれてしまいます。

  • 死亡日現在のローン残高
  • 団信契約の有無と保障範囲
  • 保険金で返済される金額
  • 免責や対象外となる事情の有無
  • 相続人が最終的に負担する残額

団信で返済され、相続人が負担しない住宅ローンを、残高証明書の金額だけで債務控除へ入れないでください。

団信の手続き中は、金融機関から「いったん返済を続けてください」と案内される場合もあり、家計からお金が出ると負担が確定したように感じますよね。私も通帳の引落しだけを見れば、その全額を債務として残したくなります。けれど後日精算や返金があるのか、利息や遅延損害金を誰が負担するのかで最終額は変わります。受付日、必要書類、保険の審査状況、精算予定を金融機関へ確認し、処理が終わった通知まで一緒に保存しましょう。

保証債務は原則対象外だが例外がある

故人が家族や会社の借入金の保証人だった場合、その保証債務は原則として債務控除の対象になりません。保証人が支払った後、主たる債務者へ返還を求める求償権があり、死亡時点で確実な最終負担とはいえないためです。

ただし、主たる債務者が弁済不能で、保証人が支払わなければならず、求償しても返してもらえる見込みがない場合は、その弁済不能部分が対象になり得ます。主債務者の財産状況や回収見込みまで含む個別判断です。

保証契約書が見つかると、家族の家計まで巻き込まれるのではと怖くなりますよね。私も「保証人」という文字を見たら、金額を確かめる前に身構えます。契約書、債権者からの請求、主債務者の返済状況を保存し、一人で控除可否を決めないようにします。

保証債務で見ること資料例
主たる債務の残高契約書、残高証明
故人の保証範囲保証契約、変更契約
主債務者の返済能力請求状況、財産・破産資料等
求償権の回収見込み専門家の確認資料
保証債務は税務だけでなく法律判断も伴うため、早めに専門家へ相談します。

保証債務がある可能性だけで相続放棄を決めるのも、預金が多いから問題ないと決めるのも危ういところです。請求期限や相続放棄の熟慮期間もあるため、資料を持って弁護士や税理士へ早めに相談してください。

墓石の未払代金や相続人の延滞税は差し引けない

墓地、墓石、仏壇など一定の祭祀財産は相続税の非課税財産です。故人が生前に墓石を購入し、代金が未払いだった場合、その非課税財産に関する未払代金は債務控除の対象になりません。

また、故人の税金であっても、相続人の責任で納付が遅れたことにより生じた延滞税や加算税などは差し引けません。本税、延滞税、加算税を納付書や計算明細で分けて記録します。

実際に家族が支払うなら、同じ負担に見えますよね。私も家計から出ていくお金を前にすると、全部同じマイナスだと感じます。でも相続税では、非課税財産に対応する債務か、相続人側の責任で増えた負担かを分けます。

  • 墓石など非課税財産の未払代金
  • 相続人の責任で生じた延滞税・加算税
  • 相続後に相続人が新しく契約した費用
  • 団信等で補てんされ相続人が負担しない債務
  • 回収可能な求償権がある保証債務

葬式費用は故人の債務ではありませんが、一定範囲を遺産総額から差し引けます。通夜・告別式・お布施・法要などの境目は、相続税で差し引ける葬式費用を整理した記事で確認してください。

負担する人と第13表、残高証明・請求書をつなぐ

債務控除は、相続や遺贈で財産を取得し、その債務を負担する相続人や包括受遺者などが使います。家族全体の債務を一括で誰か一人から引くのではなく、誰がどの債務を負担するかを申告書へ反映します。

令和8年分の相続税申告では、第13表「債務及び葬式費用の明細書」に、債権者、債務の内容、金額、負担する人などを記載します。残高証明書、請求書、契約書、納付書、支払記録を行ごとにつなげます。

きょうだいの一人がまとめて立て替えると、その人が全部負担したように見えますよね。私も振込をした人の名前だけで一覧を作りそうです。でも、一時的な立替えと最終的な負担は別なので、家族の精算表と申告上の負担者を照合します。

  • 債権者の名称と連絡先
  • 債務の種類、契約番号、死亡日残高
  • 故人の債務である根拠
  • 実際に支払った人と支払日
  • 最終的に負担する相続人
  • 残高証明、契約書、請求書、納付書

相続税の書類全体を集める順番で迷う方は、相続税の必要書類を三つの箱へ分ける記事も使ってみてください。債務資料だけを後回しにせず、財産・相続人・特例の資料と並行して集められます。

家族の精算は、税務上の負担者を決める作業と同時に行うと話がこじれやすいですよね。私も「誰が先に払ったか」と「最終的に誰が負担するか」を同じ意味で使いそうです。まず立替日、振込人、支払先、金額を事実として書き、その横へ遺産分割や家族精算後の負担者を別欄で置きます。話し合いの途中なら「未定」と書いて構いません。資料の事実と家族の合意を分けておけば、第13表へ転記する前に税理士へ確認しやすくなります。

まとめ:死亡日・債務者・確実性・負担者・資料の5列へ分けよう

死亡日・債務者・確実性・負担者・資料を五つの道具で表した立体イラスト
五つの確認列を作ると、控除できる根拠を家族で共有しやすくなります。

相続税の債務控除は、亡くなった後に家族が払った請求書をすべて集計する制度ではありません。死亡時に存在した故人の債務か、確実か、誰が最終負担するか、補てんや求償がないかを確かめます。

5列メモ記録すること
死亡日死亡時点の残高・支払義務
債務者故人か、相続人の新規契約か
確実性金額、補てん、求償の見込み
負担者立替人と最終負担者
資料残高証明、契約書、請求書、納付書
判断できないものは除外せず、「確認中」として専門家へ見せます。

書類の山を前にすると、一日で全部決めたくなりますよね。私も情報を集めるほど例外が気になり、空欄が落ち着きません。でも今日できるのは、請求書一枚へ「死亡前の利用か」「誰の契約か」と書くこと。それで十分な前進です。

死亡日・債務者・確実性・負担者・資料の五つが並べば、控除できる根拠と相談すべき点が見えます。払ったから引く、領収書がないから外すと急がず、家族で一行ずつ確かめていきましょう。

-家族と人生後半