
FIREを調べると、かなり早い段階で「年間生活費の25倍を貯め、毎年4%を使えば暮らせる」という話に出会います。数字が一つに決まると、会社を辞められる日まで見えたようで、少し気持ちが軽くなりますよね。私も最初は、4%で運用できれば元本を減らさずに暮らせる話だと思っていました。
でも、元になった米国の研究をたどると、4%は約束された運用利回りではありません。開始時の資産から一定額を取り崩し、その後は物価に合わせて引出額を変えたとき、過去の市場で資産が何年もったかを調べた目安です。元本が残る保証でも、日本の50代がそのまま使える合格点でもありません。
私には小学生の子どもがいて、教育費がどこまで増えるかはまだ読めません。住宅ローンも残っていますし、毎月の給料が途切れる怖さもあります。だから4%は、会社を辞める答えではなく、年金前後の不足額を見つけるための試算道具として使いたいと思っています。一緒に、生活費の25倍より一歩先まで見ていきましょう。
先に結論をお伝えすると、4%ルールは「退職してよい線」ではなく、生活費・年金・小さな収入・暴落時の対応を話し合うための出発点です。
FIREの4%ルールは「毎年4%で運用できる」という約束ではない
一般にいう4%ルールは、退職時の運用資産が5,000万円なら、初年度に200万円を引き出し、翌年以降は最初の200万円を物価上昇に合わせて調整する考え方です。2年目に物価が2%上がったなら、引出額は204万円というイメージです。その時点の資産残高から毎年4%ずつ引く定率法とは違います。
米国のトリニティ・スタディでは、株式と債券を組み合わせた資産から、異なる率で引き出した場合を過去データで検証しました。検証上の「成功」は、15年、20年、25年、30年などの終了時に残高が0を上回ったことです。最初の元本が残ったことでも、毎年同じ運用益が出たことでもありません。
「4%の利益だけを使う」と聞くと、とても安定した仕組みに見えますよね。私も利回りの話だと早合点したので、相場が年4%以上上がり続ければよいと思っていました。ところが実際には、値下がりした年にも生活費のために売る場面があり、資産は増えたり減ったりします。
| よくある受け取り方 | 研究に近い考え方 |
|---|---|
| 毎年4%の利益が出る | 過去の値動きで一定額を取り崩して検証 |
| 元本は減らない | 期間終了時に残高が0を上回れば成功 |
| 毎年の残高×4%を使う | 初年度額を決め、その後は物価調整 |
| 将来も安全 | 米国の過去データを使った目安 |
4%は毎年もらえる利息ではなく、資産を取り崩す速さを考えるための初期値です。
生活費の25倍は、必要資産を考える入口になる
計算はとてもシンプルです。年間生活費を4%で割ると、同じ意味で年間生活費を25倍すると、目安の資産額が出ます。月25万円で暮らすなら年間300万円、300万円×25で7,500万円です。
| 月の生活費 | 年間生活費 | 25倍した資産 | 初年度4% |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 240万円 | 6,000万円 | 240万円 |
| 25万円 | 300万円 | 7,500万円 | 300万円 |
| 30万円 | 360万円 | 9,000万円 | 360万円 |
| 35万円 | 420万円 | 1億500万円 | 420万円 |
7,500万円や9,000万円を見ると、「自分には無理だ」と思う方もいるのではないでしょうか。私も給与だけでこの金額へ向かうと考えると、かなり遠く見えます。ただ、生活費を丸ごと25倍する計算には、将来の年金も、退職後の小さな収入も入っていません。
反対に、今の家計簿が月25万円でも、固定資産税、家電交換、車検、旅行、医療費などの年払いが抜けていれば、7,500万円は少なく出ます。私は月の引き落としだけで計算せず、過去12か月の総支出を使います。家族旅行のように、今しかできない支出まで乱暴に削りたくないからです。
すでにサイドFIREの全体像から考えたい方は、50代からサイドFIREを現実的に考えた記事も並べて読んでみてください。資産額だけでなく、働き方と家計を一緒に見た方が、25倍の数字に振り回されにくくなります。
元の研究には米国・過去データ・30年という条件がある
4%ルールの根拠として紹介される研究は、米国の大型株、債券、物価の過去データを使っています。株式と債券の割合、引出率、引出期間を変えて結果を比べています。どの資産配分でも同じ結果になったわけではありません。
また、よく語られるのは30年の取り崩しです。55歳で退職して85歳までなら30年ですが、長生きすればその先があります。50歳で完全に仕事を辞めるなら、65歳からの30年とは時間の長さも、年金が入るまでの負担も違います。
有名な研究なら、そのまま答えにしてもよさそうに感じますよね。私も「過去に大丈夫だった」という言葉に安心したくなります。でも、相場が違う未来を正確に当てる研究ではありません。率を小数点まで悩むより、前提がわが家とどこで違うかを確認した方が落ち着きます。
- 生活する通貨は円、運用資産には外貨の値動きがある
- 退職年齢から何年を見込むか
- 株式と債券、現金をどの割合で持つか
- 物価上昇時に同じ暮らしを続けるか
- 下落時に支出や仕事を少し変えられるか
4%を否定する必要はありません。私は、同じ家計を3%、3.5%、4%で並べると、慎重さにいくら費用がかかるかを見られる点が便利だと感じます。年間300万円なら、4%で7,500万円、3.5%で約8,571万円、3%で1億円です。この差を、退職を遅らせる年数や小さな収入と比べます。
日本の50代は税・社会保険・教育費を生活費へ重ねる
日本で暮らす私たちは、食費や住居費に加え、退職後の健康保険料、国民年金保険料、住民税なども家計へ入れます。税額や保険料は退職時期、前年所得、自治体、家族構成で変わります。運用口座も、NISAと課税口座では売却後に使える金額が同じとは限りません。
50代では、老後だけを見ればよい家庭ばかりではありません。教育費、住宅ローン、車の買い替え、家の修繕など、退職直後に重なる支出があります。これらを平均的な生活費へ混ぜて25倍すると、多すぎたり少なすぎたりします。時期と金額が読める支出は、運用資産と別の現金枠で置いた方が見やすくなります。
わが家も、子どもが公立か私立かで教育費は変わります。住宅ローンを急いで完済するか、教育費の余白を残すかでも手元資金は変わりますよね。私自身、同じ4%でも、近く使うお金まで相場に置いている状態では会社を辞める決心がつきません。
教育費や住宅修繕費のように使う年が近いお金は、4%で取り崩す運用資産の外へ分けておきます。
だから私は、「運用資産はいくらか」より先に、毎年の生活費、5年以内の臨時支出、税・社会保険、生活防衛資金を別々に書きます。数字が増えて面倒に見えますが、全部を一つのFIRE資産へ入れるより、どこが足りないかはずっと分かりやすくなります。
年金前と年金後を二つに分けると現実に近づく

老齢基礎年金は、受給資格を満たす場合、原則65歳から受け取ります。50代で仕事を減らすなら、まず「今から年金開始まで」、次に「年金開始後」の二つへ分けます。橋が二本あると考えると、生活費全部を25倍するより現実に近づきます。
たとえば年間生活費が360万円、60歳から65歳までの小さな仕事の手取りが年間120万円なら、年金前の不足は年240万円です。5年なら単純合計1,200万円になります。65歳以降に世帯の年金見込額が年間240万円なら、その後の不足は年120万円です。ここで初めて、年金後の不足を3%、3.5%、4%で試算します。
| 期間 | 年間生活費 | 収入 | 年間不足 | 考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 60~64歳 | 360万円 | 仕事120万円 | 240万円 | 5年分を現金・運用から準備 |
| 65歳以降 | 360万円 | 年金240万円 | 120万円 | 3~4%で複数試算 |
平均年金を入れれば早いと思う方もいるかもしれませんね。私もざっくり計算では平均を使いたくなりますが、加入歴や退職時期で差が出ます。ねんきんネットで本人と配偶者の見込額を確認し、手取りに近づけるため税や保険料の余白も残します。
老後全体の不足額まで整理したい方は、50代の老後資金をわが家の数字で考えた記事も参考にしてください。4%ルールが「運用資産からいくら使うか」なら、老後資金は生活費と年金の差を先に見る話です。
小さな収入があると、必要資産と心の負担が軽くなる
年間300万円の生活費をすべて資産で賄うなら、4%の単純計算は7,500万円です。ところが、好きな仕事や短時間勤務で年間120万円を補えれば、資産から出すのは180万円。4%の単純計算は4,500万円になります。収入100万円なら必要資産の計算上は2,500万円分に相当するので、影響は小さくありません。
もちろん、副収入は毎年同じとは限りません。働けない年もありますし、事業なら経費や税金もあります。私は売上ではなく、少なめに見た手取りを使い、なくても暮らせる最低線と、あれば楽しめる上乗せを分けます。
完全リタイアでなければFIREではない、と感じる方もいますよね。私も以前は、会社を辞めた後に働いたら失敗のように見えていました。でも私が欲しいのは、働かない肩書ではなく、会社だけに生活を預けない余白です。歴史のある街へ日帰りで出かけたり、平日のカフェでゆっくりしたりできる働き方なら、少し収入がある方がむしろ安心です。
50代のサイドFIREでは、4%を下げる工夫だけでなく、資産から出す生活費そのものを小さくする道があります。
収入を計画へ入れるときは、「いつから」「何年くらい」「手取りでいくら」「ゼロでも何年もつか」の四つを書きます。希望額だけを入れると、退職後に仕事を断れなくなります。働く自由を作るはずの計画が、別の焦りを生まないようにしたいですね。
暴落時にどうするかを退職前に決めておく

取り崩し開始直後に相場が大きく下がると、安い価格で多くの口数を売ることになります。その後に相場が戻っても、売った分は戻りません。退職直後の値動きの順番が、その後の資産寿命へ強く影響する「順序リスク」です。
率を3.5%にすれば不安が消えるように感じますよね。私も相場が下がると、もっと安全な数字を探して検索を続けてしまいます。けれど、率を下げても未来は確定しません。私は数字探しを止めるために、暴落時に動かせる三つの余白を先に決めます。
- 現金の余白:相場を売らずに払える期間を決める
- 支出の余白:旅行や大型購入など、延期できる支出を分ける
- 収入の余白:短時間の仕事を増やす条件を決める
一方で、医療、住宅の安全、子どもの進路など、下落しても削りたくない支出があります。削れる費用と守る費用を退職前に家族で決めておけば、相場が荒れた日に全部を切り詰めずに済みます。わが家では、家族の思い出まで最初の削減候補にしないようにしたいです。
暴落時の値下がりを金額へ直したい方は、50代の資産配分を使う時期から考えた記事もどうぞ。私は以前、ネットの銘柄情報を信じて含み損を抱えたことがあります。下がってから方針を作ると感情に引っ張られるので、広く分散した資産へ移した今も、売る条件は平時に書いています。
安全率を一つ当てるより、相場が悪い年に「売らない・少し減らす・少し働く」を選べる方が、私は安心できます。
まとめ:3%・3.5%・4%を同じ紙で比べよう
4%ルールは便利ですが、会社を辞めてよいかを一つの数字だけで判定する道具ではありません。米国の過去データ、資産配分、取り崩し期間という条件があり、日本の税・社会保険、年金、教育費、住宅ローンは別に重ねます。
ここまで読むと、項目が多くて面倒に感じますよね。私も不安になるほど情報を集め、かえって動けなくなることがあります。そこで今週末は、完璧なシミュレーションではなく、A4用紙一枚に次の数字だけ書きます。
- 過去12か月の生活費と年払い支出
- 5年以内の教育費・ローン・修繕など
- 年金前に見込める手取り収入
- ねんきんネットで見た本人と配偶者の見込額
- 年金前後の不足額を3%・3.5%・4%で試した結果
- 暴落時に守る支出、延ばせる支出、増やせる仕事
私は、この一枚を妻と見ながら「いくらなら辞められるか」より、「どの暮らしなら二人とも不安が小さいか」を話したいです。4%の答えを探す時間を、わが家の橋を作る時間へ変える。まずは生活費を25倍する前に、年金前と年金後の線を一本引くところから始めてみませんか。