
相続したのは土地や建物ばかりで、相続税を払う現金が足りない。そんなとき「土地を国へ渡す物納がある」と知ると、売れない土地でも納税に使えるように感じますよね。私も名前だけなら、現金の代わりに財産を差し出せば終わる制度だと思いそうです。
でも物納は、相続した財産を自由に選んで国へ渡す仕組みではありません。金銭での一括納付が難しく、さらに延納でも払えない金額があり、財産の種類・順位・権利・管理処分のしやすさまで審査されます。
2026年8月21日に、国税庁の「相続税の物納」、令和7年4月1日以後の相続開始分に対応した物納の手引、物納許可限度額の改正資料を確認しました。四つの要件、財産の順位、物納できない土地、収納価額、申請期限を、家族で話しやすい順に一緒に見ていきましょう。
最初の結論は、物納は「処分に困る土地を引き取ってもらう制度」ではなく、国が管理・処分できる一定の相続財産で相続税を納める制度だということです。
相続税の物納は現金・延納でも払えないときの制度
相続税は金銭で納めるのが原則です。納期限までに金銭で一括納付するのが難しければ、まず年払いの延納を検討します。それでも金銭で納めるのが難しい金額について、一定の相続財産で納める物納を申請できる場合があります。
順番は「現金で払える額を出す」「延納で払える額を出す」「それでも残る物納許可限度額を出す」です。現金が少ないというだけで、相続税全額を物納に回すわけではありません。令和7年度改正後の計算では、将来の収入減少や平均余命、延納終了後の当面の生活費・事業経費も所定の方法で扱います。
「土地があるなら現金を用意しなくてよい」と考えたくなりますよね。正直、私も売りにくい土地をそのまま使えるなら助かると思います。でも、物納へ進む前に、自分の預金や換価しやすい財産、今後の収入まで見られます。最後の手段と呼ばれる理由はここにあります。
| 順番 | 納め方 | 見ること |
|---|---|---|
| 1 | 金銭一括 | 納期限までに用意できる現金 |
| 2 | 延納 | 年払いで納められる金額 |
| 3 | 物納 | 延納でも払えない金額と適格財産 |
相続した土地があるだけでは、物納を選べる条件を満たしたことにはなりません。
納期限と納付方法を同時に進めたい方は、相続税の10か月期限を逆算する記事も参考にしてください。申告書が完成してから物納を知るのでは、土地の整備や書類集めが間に合わなくなることがあります。
物納には四つの要件がある
国税庁が示す一つ目の要件は、延納によっても金銭で納めることが難しい事情があり、その難しい金額の範囲で申請することです。二つ目は、相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、日本国内にある一定の財産を、決められた順位に沿って選ぶことです。
三つ目は、申請財産が管理処分不適格財産に当たらず、物納劣後財産なら他に適当な財産がないこと。四つ目は、物納申請期限までに、物納申請書と物納手続関係書類を税務署へ出すことです。
相続で受け取った財産なら使えると思いたくなりますよね。私も「自分の土地なのだから、何を出すかは選べる」と感じそうです。でも物納は、国が受け取った後に管理し、必要に応じて処分できる財産かという視点で審査されます。持ち主側の都合だけでは決まりません。
- 延納でも金銭納付が難しい金額か
- 国内にある対象相続財産か
- 申請順位と財産の適格性を満たすか
- 期限までに申請書と関係書類を出せるか
四つを読むと、土地のことだけ調べても足りないと分かります。現金・延納の計算、相続税評価、登記、境界、利用者、担保権、提出期限が一本につながっています。書類の担当を税理士、不動産の現況を土地家屋調査士や司法書士などへ分けても、一覧は一つにします。
専門家が増えると、誰に何を聞いたか分からなくなりますよね。私も相談先が増えるほど、同じ説明を何度もして疲れそうです。土地ごとに一枚の表を作り、質問と回答日を残しておけば、家族も同じ情報を見られます。
物納できる財産には第1~第3順位がある

物納に使える財産には順番があります。第1順位には、不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等が入ります。その中でも、通常の財産が先で、物納劣後財産に当たる不動産や上場株式は同順位内で後になります。
第2順位は非上場株式等で、ここでも通常の財産が先、劣後財産が後です。第3順位は動産です。後順位の財産は、先順位に適当な価額の財産がない場合や、税務署長が特別の事情を認める場合などに限って使えます。
好きな財産を選べないと聞くと、かなり不自由に感じますよね。私も、残したい上場株式と手放したい土地が同じ第1順位なら、土地だけ出したくなります。ただ、種類の順位だけでなく、価額、劣後性、ほかに適当な財産があるかまで見られます。
| 順位 | 主な財産 | 同順位内の順番 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等 | 通常財産の後に劣後財産 |
| 第2順位 | 非上場株式等 | 通常財産の後に劣後財産 |
| 第3順位 | 動産 | 先順位に適当な財産がない場合など |
相続時精算課税の適用を受けた財産や、一定の納税猶予特例を受けた非上場株式・事業用資産など、物納対象から外れる財産もあります。名前が似た制度を使っていると判断が難しいですよね。贈与年、課税方式、特例名を申告書から拾っておきます。
ここで大切なのは「何を手放したいか」だけで並べないことです。私は、家族が残したい財産を先に別欄へ置き、その後で制度上の順位と適格性を確認したいです。物納できるからといって、家族にとって物納すべき財産とは限りません。
境界不明・共有・担保付き土地は物納できないことがある
国税庁は、国が管理または処分しにくい財産を「管理処分不適格財産」として挙げています。不動産では、担保権が設定されている、所有権を争っている、土地の境界が明らかでない、周囲との争いがなければ通常利用できないといった事情が代表例です。
ほかにも、一定の袋地、権利者が不明な借地権付き土地、社会通念上一体利用される不動産、二人以上の共有不動産、管理・処分費用が収納価額に比べて過大になる財産などがあります。未分割で所有権の帰属が決まっていない財産も、手引では注意対象です。
処分に困る土地ほど物納へ回したいと思いますよね。正直、私も使い道がない土地なら国に受け取ってもらいたいと考えそうです。でも、その「使いにくさ」は国にとっても同じです。境界や権利を曖昧なまま渡すことはできません。
管理処分不適格ではなくても、ほかの財産より後に扱われる「物納劣後財産」があります。借地権などが設定された土地、違法建築物と敷地、一定の自宅・事業用建物と敷地、接道条件を満たさない土地、配偶者居住権の目的となる建物と敷地などです。
「物納できない」と「順番が後になる」は、似ていて混乱しますよね。私も一覧を一度読んだだけでは取り違えそうです。候補地ごとに、不適格・劣後・通常の三つへ仮置きしてから専門家へ確かめます。
| 区分 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 管理処分不適格 | 原則として物納できない | 境界不明、担保付き、権利争い、一定の共有 |
| 物納劣後 | 他に適当な財産がない場合などに後順位で検討 | 借地権付き土地、一定の自用地、接道不足など |
| 通常財産 | 順位に沿って申請候補 | 権利と管理処分に支障がない不動産等 |
境界が分からない土地や担保付きの土地は、相続税評価額が付いていても、そのまま物納できるとは限りません。
土地の現況と評価を分けて見たい方は、相続税の土地評価を路線価×面積だけで終わらせない記事も参考にしてください。評価額が出ることと、国が管理処分できることは別の判定です。
収納価額は市場価格ではなく相続税評価額が原則
物納財産を国が受け取るときの価額を「収納価額」といいます。国税庁は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額を収納価額にすると案内しています。不動産会社の査定額や、今売れそうな市場価格をそのまま使うわけではありません。
さらに、小規模宅地等の特例を適用した土地を物納する場合、収納価額は特例適用後の価額です。相続税計算では評価を大きく下げられても、その低い価額で物納されるため、市場で売った場合の手取りと差が開くことがあります。
「評価額3,000万円の土地なら、相続税3,000万円分を払える」と考えたくなりますよね。私も数字が一つなら比べやすいと思います。でも特例適用後価額、持分、権利、現況、超過物納の扱いなどで結果は変わります。査定額と収納価額を別々の列に置いてください。
| 比べる額 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続税評価額 | 相続税計算の基礎 | 各種補正や特例が関係 |
| 収納価額 | 物納で税額へ充てる価額 | 原則は課税価格の基礎となった価額 |
| 市場査定額 | 売却時の目安 | 成約額ではない |
| 売却手取り | 売却代金から税・費用等を引いた額 | 売却期間と税金を含めて比較 |
小規模宅地等の特例が関係する方は、330㎡・80%だけで決めない小規模宅地等の特例の記事も確認してください。税額が下がる利点と、物納の収納価額への影響を同じ紙で見た方が判断しやすいです。
物納と売却のどちらが得かは、数字だけで即答できません。売却には買主探し、仲介費用、譲渡所得税などが関係し、物納には財産整備、書類、維持費、許可の不確実さがあります。私も「市場価格の方が高い」だけで決めず、納期限までに実行できるかまで比べたいです。
物納申請は納期限まで、整備費用も申請者が負う
物納申請書と物納手続関係書類は、納期限または納付すべき日までに提出します。期限内申告なら、相続税申告と同じ10か月期限へ向けて準備します。申請書だけ先に出せば何年でも待ってもらえるわけではありません。
関係書類が期限までにそろわないときは、期限延長届出書により1回3か月、最長1年まで提出期限を延ばせる仕組みがあります。標準審査期間は申請期限から3か月以内で、財産状況によっては最長9か月延長される場合があります。申請者が補完・整備する期間は別に加わります。
「最長1年なら後から境界を決めればよい」と思いたくなりますよね。私も時間があるように感じます。でも、延びるのは関係書類の提出期間で、家族の合意や隣地との話し合いが自動的に進むわけではありません。難しい土地ほど早く現況を確認したいです。
土地の登記、手数料、境界標の設置、実測などの整備費用と、許可までの固定資産税・修繕費などの維持管理費用は申請者負担です。また、申請者側で書類を直す期間や収納のための措置を行う期間、却下等の場合には利子税がかかることがあります。
- 申告・納付・物納申請の期限
- 物納手続関係書類の提出予定
- 測量・境界・登記の担当と費用
- 固定資産税、修繕、管理費の負担
- 補完通知や措置通知への回答期限
- 許可・却下・再申請の連絡先
物納を考えるなら、申請期限だけでなく、財産を国へ引き渡せる状態に整える費用と時間まで見積もってください。
審査を待っている間は落ち着かないですよね。私も許可される前提で家計を組みたくなりますが、却下や追加措置も想定します。現金で払う予備案、延納へ切り替える条件、別財産の再申請候補を、専門家と一緒に残しておくと少し安心です。
土地ごとに権利・境界・利用・価額を一組でそろえる
物納候補の不動産は、登記事項証明書や公図だけで判断しません。名義と持分、抵当権、境界、接道、利用者、賃貸借、建物の状態、固定資産税、相続税評価額、市場査定額を一組にします。書類と現地の状態が違えば、その理由も写真とメモで残します。
物納申請財産に不適格な事情が見つかった場合、申請が却下されることがあります。管理処分不適格と判断されて却下されたときは、一定の条件で、却下日の翌日から20日以内に別財産による再申請を1回行える制度もあります。短い期限なので、第二候補まで先に見ておきます。
書類を集めるほど、土地の問題が増えて見えることがありますよね。私も公図、測量図、契約書が並ぶと、どれが最新か分からなくなりそうです。そんなときは、書類名ではなく「権利・境界・利用・価額」の四つに分けると、足りないものが見えます。
| 確認欄 | 見る内容 | 資料例 |
|---|---|---|
| 権利 | 名義、持分、担保権、賃借権 | 登記事項証明書、契約書 |
| 境界 | 境界標、隣地確認、面積 | 確定測量図、公図、現地写真 |
| 利用 | 居住者、賃借人、建物、接道 | 賃貸借契約、建物図面、現況写真 |
| 価額 | 相続税評価、収納価額見込み、査定 | 評価明細、特例計算、査定書 |
家族の中で「この土地はいらない」と意見がそろっても、物納適格とは限りません。私は、不要かどうかと制度上受け取ってもらえるかを分けて話したいです。残したくない理由が管理費なら、売却や寄附など別の選択肢も含めて比較できます。
専門家へ渡すときは、原本を全部持ち歩かず、一覧と写しを先に共有します。土地が複数あると、別の土地の境界図を混ぜる事故も起きやすいですよね。地番、所在地、資料日付を同じラベルにし、誰が原本を保管しているかも書いておくと安心です。
まとめ:現金・延納・財産・権利・価額の5列で比べよう

相続税の物納は、現金一括でも延納でも払えない金額について、日本国内にある一定の相続財産を、順位と適格性に沿って納める制度です。土地があること、手放したいこと、相続税評価額が付くことだけでは決まりません。
私も制度を調べると、「物納できるか」の二択に入り込みそうです。でも家族が本当に決めたいのは、相続税をどう払い、どの財産を残すかです。紙に「現金・延納・財産・権利・価額」の5列を作ると、物納だけを特別扱いせずに比べられます。
- 納期限までに用意できる現金を書く
- 延納で払える金額と年払い額を確認する
- 物納候補を財産順位で並べる
- 担保権・共有・境界・利用者を確認する
- 収納価額と市場売却の手取りを分ける
- 整備費用、維持費、申請期限を年表へ入れる
- 第一候補と第二候補を税務署・税理士・不動産専門家へ見せる
ここまで読んでも、「売るのと物納のどちらがよいか」は迷いますよね。まず完璧な答えを出さなくて大丈夫です。一つの土地について、相続税評価額、査定額、担保権、境界、利用者の五つを書くだけで、相談の質はかなり変わります。
私は家族のお金を日頃から話したいと思っていますが、土地には思い出や感情も乗ります。「納税のためだから」と急いで手放す前に、残したい財産と納付に使える財産を別の色で囲んでください。その一手間が、税金だけで家族の財産を決めないための土台になります。