
大学費用を調べていると、奨学金という選択肢が出てきます。そこで迷うのが、「借りるのは子どもでも、返すのは親でよいのか」「親が払えなくなったら、結局は誰の負担になるのか」ということです。
私も子どもが小学生の今、進路はまだ決まっていません。それでも教育費と老後資金が同時に近づく50代として、必要になってから慌てて「とりあえず借りよう」とはしたくないと思いました。親が返すつもりでも、申込上の借り手や保証の意味まで同じになるわけではないからです。
先に結論を言うと、日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金は、貸与を受けた本人に返還義務があります。そのうえで親が毎月の返還を支えることは、家族の中で決める負担方法です。制度上の責任と、家計から実際に出す人を分けて考えると、話が整理しやすくなります。
今回は、給付と貸与、人的保証と機関保証、親子の返し方を順番に確認し、借りる前に決めておきたい境界線をまとめます。
親が払う予定でも、奨学金を借りる本人は子ども
最初に外せないのは、「誰の名義で借りるか」と「誰の家計から返すか」は別だという点です。JASSOは貸与奨学金について、貸与を受けた本人に返還義務があると案内しています。親が卒業後の返還額を子どもの口座へ入れる約束をしても、奨学金そのものが親名義の借入へ変わるわけではありません。
これ、家族の会話では意外と曖昧になりやすいですよね。親は「大学費用は出してあげる」と思い、子どもは「奨学金だから自分が返す」と受け取るかもしれません。反対に、親が返すと思っていたのに、退職や収入減で続けられなくなることもあります。
「親が返すから大丈夫」ではなく、本人に返還義務が残る借入だと親子で確認してから申し込みたいです。
私は、親が支援する場合でも「返還を代わって背負う」と一言で決めず、毎月いくら、いつまで、どの条件なら見直すかまで紙に残したいです。大学卒業後は、就職、転居、結婚、病気など、親子それぞれの暮らしが変わります。十数年続くかもしれない約束を、今の収入だけで固定しないためです。
そもそも借りる額を小さくする準備は、50代から教育費を貯める口座と入金ルールでも整理しています。奨学金を使うかどうかにかかわらず、入学前に必要な現金と、卒業後に返すお金を同じ箱へ入れない方が見通しは立ちます。
給付・第一種・第二種を、同じ「奨学金」にしない

次に確認したいのは、奨学金の種類です。「奨学金を月5万円使う」とだけ話しても、返還が不要な給付なのか、無利子の第一種なのか、有利子の第二種なのかで卒業後は変わります。
| 区分 | 返還 | 借りる前に見ること |
|---|---|---|
| 給付奨学金 | 原則不要 | 家計・学業などの要件、支援区分、大学の対象確認 |
| 第一種奨学金 | 必要 | 無利子、貸与月額、返還方式、保証制度 |
| 第二種奨学金 | 必要 | 有利子、貸与月額、利率の算定方法、保証制度 |
文部科学省の高等教育の修学支援新制度には、授業料・入学金の減免と給付型奨学金があります。対象になり得るなら、貸与額を決める前に学校やJASSOの案内で確認したいところです。予約採用だけで決まらない場合でも、進学後に申し込める制度がないか大学の窓口へ聞く余地があります。
第一種は無利子、第二種は有利子です。ただし、第一種でも機関保証を選べば保証料が毎月の貸与額から差し引かれます。第二種は在学中には利子がかからず、貸与終了後の返還に利子が加わります。実際の利率や返還額は利用条件で変わるので、申込時の上限だけでなくJASSOの貸与・返還シミュレーションで確認します。
JASSOでは、貸与終了の翌月から数えて7か月後に返還が始まります。一般的に3月で貸与が終われば10月が初回です。卒業直後からではないため少し余裕があるように見えますが、就職後の手取りや家賃が分からないまま半年が過ぎることもあります。
借りられる月額ではなく、卒業後に返せる総額から貸与月額を決める順番が大切です。
私は「不足しそうだから最大額を借りる」ではなく、まず学校納付金と生活費の不足だけを出したいです。給付、貯蓄、親の現役収入、本人の無理のない負担を差し引き、最後に残った金額を貸与で補う。この順番なら、使わないお金まで借りて返還期間を長くするのを避けやすくなります。
人的保証を選ぶと、親が連帯保証人になることがある
「親が返すか」を考えるとき、保証制度も外せません。JASSOの貸与奨学金では、人的保証か機関保証を選ぶ場面があります。名前が似ていますが、親の責任と毎月受け取る金額が違います。
| 保証 | 主な仕組み | 確認したい負担 |
|---|---|---|
| 人的保証 | 連帯保証人と保証人を立てる | 父母等が連帯保証人になる場合の責任 |
| 機関保証 | 保証機関が連帯保証する | 保証料が貸与額から差し引かれる |
人的保証では、原則として父または母が連帯保証人、4親等以内の成年親族などが保証人となります。本人が返還できないとき、連帯保証人へ請求が及ぶ可能性があります。「子どもの借入だから親には関係ない」とはいえません。
機関保証は連帯保証人と保証人が不要ですが、保証料がかかります。そして、保証機関がいるから本人の返還がなくなる制度ではありません。延滞が続いて保証機関がJASSOへ代位弁済した場合、保証機関は本人へその金額を請求します。
ここは、費用だけで決めない方がよいと思います。人的保証なら保証料はありませんが、家族や親族へ長い責任をお願いすることになります。機関保証なら保証料を含めた受取額と返還額まで見ます。親の年齢、収入、健康、親族関係も含め、どちらがわが家に合うかを申し込み前に確認したいです。
私なら、連帯保証人になる可能性を「書類に名前を書くだけ」とは扱いません。子どもへは、返還が難しくなったら黙って延滞せず、早い段階でJASSOへ相談するところまで伝えます。保証は、家族が代わりに払えば終わるという話ではなく、困る前に連絡するルールと一緒に決めたいです。
親子の返し方は、全額・本人・分担の3つで比べる

制度を確認したら、家族の負担方法を決めます。私は「親が返すか、子どもが返すか」の二択にしません。親が全額支える、本人が返す、一定額を分担する、の3つで比べると現実的です。
| 返し方 | よい面 | 先に決めること |
|---|---|---|
| 親が全額支援 | 就職直後の本人負担を抑えられる | 親の退職後も続けられるか |
| 本人が返還 | 借入と返還の関係が明確 | 借りる額と就職後の生活費 |
| 親子で分担 | 双方へ負担を分けられる | 定額か、期間か、費目か |
親が全額支える案は、子どもの社会人生活を助けられます。ただし、50代の親が返還を始める時期には、退職、住宅の修繕、介護、自分たちの医療費が近づきます。「今なら月2万円を出せる」が、10年後にも同じとは限りません。
本人が返す案でも、放っておくこととは違います。借りる前に総額を共有し、就職後の家賃や手取りを想定し、返還開始前に口座残高を確認する。困ったときに親が一時的に支える条件まで話しておけば、本人だけが不安を抱えにくくなります。
分担するなら、「半分ずつ」だけで終わらせない方が安心です。親が最初の3年間だけ月1万円を支える、本人が返還し親はボーナス月に繰上返還用の資金を出す、親が学費の不足分だけ担当するなど、金額と期間を具体的にします。繰上返還は制度上の条件もあるため、実行前にJASSOの案内を確認します。
親の愛情を「いくらでも払う約束」にせず、続けられる金額と見直す条件まで決めておきたいです。
教育費と老後資金の優先順位に迷うときは、教育費と老後資金をどちらも諦めない考え方も参考になります。親が支える額は、教育費口座の残高だけでなく、老後の生活費を守ったうえで決める方が、結果として子どもへ負担を戻しにくいです。
月額より、4年間の貸与総額と返還後の家計を見る
奨学金は月額で案内されるため、5万円、8万円と聞くと家計へ収まりそうに見えます。でも、大学4年間なら月5万円でも単純計算で240万円です。月8万円なら384万円になります。第二種なら、この元金に利子を含む返還となります。
たとえば240万円を15年で均等に割るだけなら、元金部分は月約1万3,300円です。これは利子、保証料、返還方式などを入れていない単純例で、実際の返還額ではありません。それでも、毎月5万円の貸与が卒業後には長い固定支出になる感覚はつかめます。
- 必要な学費と生活費はいくらか
- 給付や授業料減免で補える額はいくらか
- 親が在学中に出せる額はいくらか
- 貸与月額×貸与月数の総額はいくらか
- 卒業後の返還月額を、誰の家計へ置くか
私は、子どもの初任給を楽観的に置かず、家賃、税・社会保険料、食費、通信費を引いたあとの金額で考えたいです。希望する仕事が決まっていない段階なら、返還額を大きくしすぎない余白を優先します。親が返す案でも、同じように退職後の年金見込額から返還分を引いてみます。
もう一つ大切なのは、奨学金を生活防衛資金の代わりにしないことです。貸与額を余らせて安心を買うより、家庭の急な出費に備える現金は別に持ちます。50代家庭の生活防衛資金を何か月分持つかで整理したように、病気や収入減に使うお金と教育費の借入は役割が違います。
借りる前には、JASSOのシミュレーション結果を印刷するか保存し、貸与総額、返還月額、返還回数、保証料の見込みを親子で見ます。申込画面を進める人だけが数字を知る状態にしない。これだけでも、卒業時に初めて残高を知る驚きを減らせます。
借りる前の1枚と、年1回の見直しで曖昧さを残さない
親子の約束は、立派な契約書にする必要はありません。A4用紙1枚に、借りる目的、月額、予定総額、保証、卒業後に払う人、親が支援できなくなった場合を書けば十分です。申し込み時、進級時、卒業前の年1回だけでも見直します。
- この借入は学費、生活費のどちらに使うか
- 給付・第一種・第二種のどれか
- 人的保証・機関保証のどちらか
- 貸与月額と卒業時の見込総額
- 返還口座へ入金する人、金額、期間
- 休学、退学、就職難、親の収入減で見直す条件
話し合いでは、親が先に結論を押しつけないことも意識したいです。「借金は怖いから進学先を変えなさい」と始めると、子どもは希望を話しにくくなります。まず、何を学びたいか、自宅から通えるか、給付を探したかを聞き、そのあとで親が出せる上限と貸与後の返還額を同じ紙へ載せます。
反対に、「将来のあなたが返せばよい」と本人へ全部預けるのも早すぎると思います。高校生の段階では、税金や社会保険料を引いた手取り、家賃、食費を具体的に想像しにくいからです。月1万5,000円の返還なら、動画配信サービスのような軽い固定費ではなく、家賃と一緒に毎月先に出るお金だと伝えます。
わが家なら、第一希望、費用を抑えた案、自宅から通う案の3つを並べます。そのどれを選んでも、借りる必要額と親の支援額が見えるようにします。進学先を金額だけで決めるためではなく、希望を残すために必要な準備期間を知るためです。数字を早く出せば、給付制度、大学独自の奨学金、寮などを探す時間も増やせます。
返還が難しくなった場合、JASSOには毎月の返還額を減らして返還期間を延ばす減額返還制度や、一定期間返還を待ってもらう返還期限猶予制度があります。どちらも自動で適用されるものではなく、条件を確認して願い出る制度です。返還総額そのものがなくなる仕組みではありません。
苦しくなってから親子で責任を押し合うのではなく、延滞する前に相談する連絡先まで共有しておきたいです。
私なら、申込時の1枚を妻と子どもと一緒に見ます。子どもがまだ小学生の今は具体的な借入額を決められませんが、「貸与なら本人の借入」「親の支援は老後資金を崩しすぎない範囲」「困ったら早く相談」という線は今から共有できます。
奨学金は、進学の選択肢を広げる大切な制度です。だからこそ、借りることを怖がるだけでも、返すことを卒業後へ先送りするだけでも足りません。給付を先に探し、必要額を絞り、保証を選び、誰がどこまで支えるかを決める。その順番なら、制度を家族の不安ではなく、学びを支える道具として使いやすくなります。
最初の一歩は、紙に「名義」「保証」「実際に払う人」の3つを書くことです。答えが同じでなくても大丈夫です。違いが見えたところから、わが家で続けられる返し方を話し始めたいです。